実家暮らしは“甘え”なのか──わたしが安心できる場所を選んだ理由

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「まだ実家暮らしなんだ?」
その一言に、少し胸がざわついた。

一人で暮らさなきゃ、自立した大人じゃない。
親に頼っているなんて、甘えているだけ。

そんなふうに言われているような気がして、
本当は心のどこかで「いけないことかもしれない」と思っていた。

でも、
夜に「おかえり」と言ってくれる人がいること。
疲れた日に、そっと温かいご飯が出てくること。

それって、本当に“甘え”なんだろうか?

この文章は、そんな問いかけから始まります。

土居健郎の『甘えの構造』という本をヒントにしながら、
「甘えること」や「自立すること」の本当の意味を、
自分の暮らしのなかで、静かに見つめてみました。

いま、誰かに「それでいいよ」と言ってほしい人へ。
あなたの心が、少しでもゆるむきっかけになりますように。

実家=甘え?という視線の圧

「実家にいるんだね」
そう言われるたびに、
相手の声の温度を測ってしまう自分がいる。

それはただの事実の確認かもしれないし、
何気ない一言かもしれない。
でも、その奥にある“評価”のようなものに、
私は敏感に反応してしまう。

いつからだろう。
実家で暮らしていることが、
「甘えている」「自立できていない」と結びつけられるようになったのは。

社会に出たら一人暮らしをして、
家事も生活も自分でこなして、
経済的にも精神的にも自立していないと、
“ちゃんとした大人”と見なされない。

そういう空気が、
言葉にならないまま漂っている。

そしてその空気を、
私たちは深く吸い込みすぎて、
本当にそうしなければいけないと思い込んでしまう。

でも本当に、
誰かと暮らしていること、
誰かのぬくもりの中で息をしていることは、
そんなに“いけない”ことなんだろうか。

でも、“甘え”って本当はいけないこと?

「甘えてるね」
そんなふうに言われると、
どこかで「大人じゃない」と決めつけられた気がして、
胸の奥が、きゅっと縮こまる。

でも、ふと思う。
そもそも「甘える」って、悪いことなんだろうか?

子どもが、
母親に手をのばして「だっこ」と言うように。
悲しいとき、誰かの言葉じゃなくて、
ただそばにいてほしいと願うように。
「甘えたい」という気持ちは、
誰かとつながりたいという、ごく自然な心の動きなのに。

精神科医の土居健郎さんは、
『甘えの構造』という本の中でこう語っている。

「甘えることができるということは、ある意味で人間関係の深さの証である」

つまり、
甘えられるというのは、信頼している証拠。
心を許しているからこそ、少し無防備になれるということ。

それはむしろ、
人と人とが温かくつながるために必要なものなのかもしれない。

わたしが実家で感じていた心の緩みや、
“わかってくれる”という無言の安心は、
決して逃げや依存なんかじゃない。

それは、ちゃんと信頼が育っていたという証拠なんだ。
そう思えたとき、
心の奥で、長く握りしめていた「いけないこと」が、
すこしずつ、ほどけていった。

誰かに守られていることで、私の心は広がっていく

夜、疲れて帰ってきたとき、
玄関の明かりがついていて、
「おかえり」と声をかけてくれる人がいる。

台所から、味噌汁の香りがふわっとただようと、
自分でも気づかないうちに、呼吸が深くなる。

そんなふうに、誰かに見守られている安心感は、
私の中に静かに根を張って、
明日を生きるための力になってくれていた。

大きな声で自信を持つことは、まだできないけれど、
守られているという感覚があるから、
私は外の世界で、少しずつ人にやさしくなれる。
自分を責めすぎずに、人を責めすぎずに、
ほどよく、関わっていけるようになった。

「守られること」は、「甘え」かもしれない。
でもそれは、自分の世界を閉じることじゃなくて、
安心という土壌の上に、心を開くことなのかもしれない。

そしてそれは、
誰かに甘えることでしか、育たないものもある──
そんな気がしている。

自立とは、離れることではなく、自分の居場所を肯定すること

「自立しなきゃ」と思っていた。
誰にも頼らずに、自分の力だけで立っていなければ、
大人として認められない気がしていた。

でも今は、すこしだけ考え方が変わった。

自立って、
親と離れることでも、
ひとりでがんばることでもなくて、
自分の選んだ居場所を、ちゃんと自分で肯定することなんじゃないかと。

もし、実家が心から安心できる場所なら、
そこにいる自分を、責めなくていい。
誰かと一緒にいることを、
「未熟」なんて呼ばなくていい。

守られながら、
安心しながら、
少しずつ心を開いていける人もいる。

わたしは、そんなふうにしか前に進めなかったけれど、
それでも、ちゃんと少しずつ大人になってきたと思う。

だから今、実家で暮らしているあなたへ。
「それでいいんだよ」と、そっと伝えたい。

どこで暮らしていても、
どんな形で生きていても、
あなたがあなたでいられる場所こそが、
本当の意味での“自立”のはじまりなのだと──。

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